東京高等裁判所 昭和47年(ネ)1594号 判決
不法行為に基づく損害の一種としての逸失利益とは、被害者の稼働能力が毀損されたため、もしもそのような事態が発生しなかったならば本人において本来取得しうべかりし収益を喪失したことによる損害を意味するものである。翻って恩給法第七三条第一項第二号によると、普通恩給を給せられる公務員が死亡したときには、その遺族に対し妻、未成年の子、夫、父母、成年の子、祖父母の順位により扶助料を給するものとされていることからすれば、遺族扶助料は、普通恩給受給権者の死亡を契機として、その恩給収入に依存していた遺族に対する損失補償ないしは生活保障のために支給されるものであって、これに基づく収益は受給権者の稼働能力には全くかかわりのないところのものである。
してみると、右のような遺族扶助料の受給権者が他人の不法行為によって死亡したことに伴って受給権が消滅し、受給権者において将来についての遺族扶助料の支給を受けられなくなったとしても、これをもって不法行為の被害者の得べかりし利益の喪失としてその賠償を請求することが許される筋合いではないといわなければならない。
(桑原 西岡 青山)